はじめに
決済業界の未来はどうなる?
キャッシュレス化が進む中、決済業界は大きな変革期を迎えています。
従来のクレジットカードブランドである VISA(ビザ)とMastercard(マスターカード) に加え、仮想通貨取引所である Coinbase(コインベース) も新たな決済手段として注目を集めています。
本記事では、VISA・Mastercard・Coinbase の財務分析を交えながら、今後の決済業界の未来を予測し、それぞれの企業の強みを比較していきます。


サマリーシートにまとめました。時間のない方はシートだけでも参考にしたいだければと思います。以下他社と比較して深掘りしていきます。このスコアリングシステムは、企業の財務健全性を評価するための独自基準です。本ブログ内での比較を目的としており、他のスコアリングシステムと一致しない場合があります。
株価と時価総額の比較
• Visa(V / 時価総額:約5,500億ドル):世界最大の決済ネットワーク
• Mastercard(MA / 時価総額:約5,182億ドル):VISAに次ぐ業界2位の巨頭
• Coinbase(COIN / 時価総額:約400億ドル):仮想通貨決済の新興勢力

2012年頃まではVisaとMastercardの2強体制が続いていました。しかし、2012年にCoinbaseが登場し、決済業界の勢力図が大きく変わり始めました。VISAは仮想通貨の台頭を脅威とするのではなく、USDC決済の導入やCoinbaseとの提携、ブロックチェーン技術への投資を進めることで仮想通貨と共存する戦略を取り、従来の金融ネットワークと仮想通貨の橋渡し役としての立場を強化しながら、依然として業界のリーダーとしての地位を維持している。
収益性の比較
Visa(V)、Mastercard(MA)、Coinbase(COIN)
Gross Profit Margin (売上総利益率): 売上総利益率は、企業が販売した商品の売上から直接的な製造コスト(原材料費や労働費用)を引いた後の利益率を示します。この指標は、企業の製品がどれほど利益を生み出しているかを評価するために使用されます。
Operating Profit Margin (営業利益率): 営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合を示し、企業が本業の事業活動でどれだけ利益を上げているかを評価します。この指標は、コスト管理や効率的な運営を反映する重要な指標です。
Net Profit Margin (純利益率): 純利益率は、売上高に対して最終的に残る純利益の割合を示します。これにより、税金や利息、非営業的な支出を差し引いた後の企業の最終的な利益の健全さを評価することができます。

VISAの**売上総利益率(80%)**は非常に高く、これは主に事業モデルによるものです。VISAは決済ネットワークを提供し、カード発行や与信リスクを負わないため、コストが低く抑えられます。つまり、売上に対して直接かかる費用(原価)が少なく、高い粗利益を維持できるのです。
**営業利益率(70%)**も高く、これはVISAのビジネスがスケーラブルであり、固定費をカバーした後は利益が増えやすい構造になっていることを示しています。マーケティングやシステム維持のコストはかかるものの、新規取引が増えても追加コストは比較的少なく済みます。
最終的な**純利益率(58%)**も非常に高い水準です。これは、VISAが多額の税金を払っても、借入コストやその他の経費が少ないことを反映しています。つまり、売上の半分以上が最終的な利益として残るほどの強固な収益力を持つ企業ということです。
マスターカードとの比較
マスターカードの**売上総利益率(78%)**はVISAとほぼ同じですが、営業利益率(60%)、**純利益率(55%)**はVISAよりやや低めです。これは、マスターカードのビジネス構造がVISAと似ているものの、規模やコスト構造の違いにより、やや収益性が劣るためです。VISAのブランド力や市場シェアが強いため、コスト効率や取引単価で優位に立っている可能性があります。
コインベースの厳しい状況
コインベースはVISAやマスターカードとは異なり、仮想通貨取引所を運営する企業です。そのため、収益モデルも大きく異なります。
**売上総利益率(65%)**は高めですが、**営業利益率(−10%)**と赤字になっているのが特徴的です。これは、マーケティング費用や規制対応コスト、システム維持費などの固定費が大きく影響しているためでしょう。仮想通貨市場の変動が激しく、取引量が減ると一気に収益が悪化するリスクもあります。
ただし、**純利益率(2%)**はかろうじて黒字圏内に戻っているため、投資やコスト削減によって一時的な営業赤字を補っている可能性があります。しかし、安定した収益基盤を持つVISAやマスターカードと比べると、収益の安定性には大きな課題があります。
財務安全性とキャッシュフローの分析
Financing Cash Flow (財務キャッシュフロー)
Investing Cash Flow (投資キャッシュフロー)
Operating Cash Flow (営業キャッシュフロー)



VISAは安定したキャッシュフローを活かして、継続的な株主還元や戦略的な投資を行い、決済ネットワークの拡大や新技術への適応を進めているのに対し、Coinbaseは投資キャッシュフローが比較的少なく、主に市場の波に乗る形で成長を図っているため、仮想通貨市場の拡大期には大きな利益を生むものの、長期的な競争力の強化という点ではVISAのような積極的な事業投資を行う企業と比べると成長の安定性に課題がある。
ROEと資本効率性の比較

MastercardのROEが120〜130%と圧倒的に高いのは、自社の収益力に加え、**資本効率の最適化(レバレッジ活用や積極的な自社株買い)**を進めているためであり、VISAも約40%と非常に高い水準にあるものの、より慎重な資本政策を採用していることがうかがえる。一方、CoinbaseのROEは約10%と低く、仮想通貨市場の変動による利益の不安定さや、比較的資本を多く抱えていることが影響しており、資本効率の面ではVISAやMastercardに大きく劣ることが分かる。
レーダーチャートでみるVisaの特製



Visa(V)は、高いROEとROAを維持しながら、安定したキャッシュフローを生み出せる強みを持つ一方、Debt to Equity(負債比率)がやや高く、積極的な資本活用を行っている点が特徴的だ。Mastercard(MA)も同様の特性を持つが、負債比率がより低く、保守的な財務戦略を採用しているため、安定性ではVisaをやや上回っている。
一方、Coinbase(COIN)はROE・ROAがVisaやMastercardに比べて低く、仮想通貨市場の変動による影響を受けやすいため、収益の安定性に課題がある。また、Price to Book(P/B)やPrice to Earnings(P/E)が低いことから、市場からの成長期待が相対的に低いことも示唆される。
投資家目線で考えると、仮想通貨の普及が進んでも従来の決済インフラは依然として重要であり、VisaはCoinbaseと提携しながら仮想通貨決済の橋渡しをする役割を強化しているため、決済業界の中心的な存在であり続ける可能性が高い。また、VisaとMastercardは類似したビジネスモデルを持つが、Visaの方がより積極的な資本活用を行う戦略をとっており、成長ポテンシャルを重視する投資家にとっては魅力的な選択肢となるだろう。
引用例: 「このデータはFinancial Modeling Prep APIを利用して取得しました。」
まとめ
決済業界の未来と投資家への示唆
決済業界は、クレジットカードブランドであるVisaとMastercardが引き続き強い基盤を持ちながら、仮想通貨の普及により新たな競争環境を迎えている。Visaは仮想通貨市場の成長を脅威とするのではなく、Coinbaseとの提携やブロックチェーン技術への投資を通じて、仮想通貨決済の橋渡し役としての立場を確立している。この戦略により、Visaは今後も決済インフラの中心的存在であり続ける可能性が高い。
財務面では、VisaとMastercardは高収益な手数料ビジネスを基盤とし、特にMastercardは資本効率を最大化することで圧倒的に高いROEを達成している。一方、Visaはより慎重な資本政策を採用しつつも、安定したキャッシュフローを活かして成長投資を続けているため、長期的な視点での競争力を維持している。対照的に、Coinbaseは仮想通貨市場の変動に左右されやすく、収益の安定性や資本効率の面でVisaやMastercardに劣る。
投資家目線で見ると、仮想通貨が普及しても従来の決済ネットワークは不可欠であり、Visaはその中心的な役割を担い続けると考えられる。また、VisaとMastercardは類似したビジネスモデルを持つが、Visaの方が積極的な資本活用を行う戦略をとっているため、成長ポテンシャルを重視する投資家にとって魅力的な選択肢となるだろう。

本ブログでは、企業の収益性を分析するために、PythonのyfinanceライブラリとAlpha Vantage APIを活用しています。これらのツールを用いることで、株価や財務データを取得し、指標を算出して比較することができます。ただし、あくまで個人が作成したものであり、専門的な分析とは異なるため、参考程度にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。少しでも皆さまのお役に立てれば嬉しく思います。今後も、分かりやすく役立つ情報をお届けできるよう努めてまいりますので、よろしくお願いいたします。
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