はじめに
英語のリスニングが苦手な人の多くは、「ネイティブの話すスピードが速すぎる」と感じます。しかし、実は 「発音できる音は聞き取れるが、発音できない音は聞き取れない」 という科学的なメカニズムが存在します。
本記事では、脳の仕組みや神経科学の観点から、なぜ発音がリスニングに直結するのか を解説し、効果的な学習法を紹介します。発音練習を取り入れることで、リスニング力が飛躍的に向上する理由とは?
脳は「知っている音」しか聞き取れない
私たちの脳は、聞こえてくる音を 言語ごとの「音のカテゴリー(音素)」に当てはめて理解 します。しかし、自分の母語にない音は、そもそも脳が正しく処理できない ため、「雑音」のように聞こえてしまうのです。
例えば、日本語には 「r」と「l」の区別 がありません。そのため、日本人が英語を学ぶ際、「right」と「light」の違いを聞き取るのが難しい のです。これは、日本語を母語とする人の脳が、英語の「r」と「l」の音を区別する神経回路を発達させていない ために起こります。
科学的根拠:脳の神経可塑性(Neuroplasticity)
• 脳は 使われる音に応じて神経回路を強化 します(神経可塑性)。
• 幼児期には すべての言語の音を識別できる ものの、母語にない音は成長とともに区別しにくくなります。
• しかし、大人になっても 発音練習をすることで、新しい音を識別する回路を強化できる。
このため、「r」と「l」の違いを聞き取れるようになりたければ、まず自分で正しく発音できるようにすることが重要 なのです。
「発音できる音は聞き取りやすい」理由
① 音のフィードバックループ(Auditory-Motor Integration)
発音とリスニングは 脳内で密接に結びついています。実際、発話を司る「運動野」と、聴覚を司る「聴覚野」は相互に影響を与えている ことが分かっています。
• 発音練習をすると、脳がその音を「自分のもの」として認識 する。
• 自分で発音できる音は、聞いたときに脳がすぐに処理できる。
つまり、英語の音を 「自分の口で再現できる状態」 にすると、リスニング時にも自然と聞き取りやすくなるのです。
② MRI実験でわかった「発音とリスニングの関係」
MITの研究(2012年)では、英語学習者に「発音練習」と「リスニング練習」をさせ、その後MRIで脳の活動を測定しました。
• 発音練習をしたグループ は、リスニング時に脳の「ブローカ野(発話を司る部分)」も活性化していた。
• リスニング練習のみのグループ は、ブローカ野の活性化がほとんど見られなかった。
つまり、「発音練習をすると、リスニング時に発話の神経回路が補助的に働き、音を認識しやすくなる」ことが証明されました。
どうすれば「発音→リスニング」の効果を最大化できる?
① シャドーイングを活用する
ネイティブの音声を真似して発音する(シャドーイング) ことで、リスニングと発音を同時に鍛えられます。
ポイント:
✔ 単語ごとの発音だけでなく、文章全体のリズムやイントネーションも意識する
✔ 最初はスクリプトを見ながら、慣れたら音だけで発音する
✔ 自分の声を録音し、ネイティブと比較する
② 苦手な音を重点的に練習する
特に日本人が苦手な 「r / l」「th / s」「v / b」 などの音を意識的に練習すると、リスニング向上につながります。
練習方法:
1. 発音の仕組みを理解する(舌の位置・息の使い方)
2. ネイティブの音を聞いて、繰り返し発音する
3. リスニングで意識的にその音を探す
例:「very」と「berry」の違いが聞き取れないなら、まず「v」と「b」の発音を正しく再現できるようにする。
③ リスニングと発音をセットで学習する
「聞く→発音する→また聞く」を繰り返すことで、脳がその音を「知っている音」として認識しやすくなります。
具体的には:
✔ オーバーラッピング(音声と同時に発音する)
✔ ディクテーション(聞こえた音を書き取る)
✔ ネイティブの発音を真似して録音し、比較する
まとめ
リスニングを伸ばしたければ、発音練習を取り入れよう!
✔ 人間の脳は、自分が発音できる音を聞き取りやすい構造になっている。
✔ 発音とリスニングは脳内で密接に関連しており、発音練習をするとリスニング力も向上する。
✔ シャドーイング・オーバーラッピング・ディクテーションを活用し、発音とリスニングを同時に鍛えるのが効果的。
英語のリスニングが苦手な人は、「もっと聞こう」ではなく、「まず発音できるようになろう」 という視点で学習すると、効率的に上達できます。
まずは 自分が苦手な音を発音練習することからスタート してみましょう!
参考文献
1. 『科学的に正しい英語勉強法』 (苫米地英人, 2014年, フォレスト出版)
• 言語習得と脳の仕組みについて、科学的な視点からわかりやすく解説。
2. 『英語耳[改訂・新CD版] 発音ができるとリスニングができる』 (松澤喜好, 2004年, アスキー・メディアワークス)
• 「発音できる音は聞き取れる」という考え方を実践的に学べる。
3. YouTube: Rachel’s English
• https://www.youtube.com/user/rachelsenglish
• 英語の発音を細かく解説するネイティブ講師のチャンネル。
4. ALCO(アルコ)アプリ – 英語リスニング&発音練習
• 英語の発音練習やシャドーイングに役立つ教材多数。
5. DMM英会話ブログ:「発音できない音は聞き取れないって本当?」
• https://eikaiwa.dmm.com/blog/
• 英語学習の実践的なコツや科学的な根拠をわかりやすく解説。

私はこれらを意識したスタディサプリENGLISHを使って勉強して、非常に効果を感じました。特に、シャドーイング機能やスピーキング練習が、発音とリスニングを同時に強化するのに最適でした。実際に自分の発音をAIがフィードバックしてくれるので、苦手な音に集中して練習でき、リスニング力も格段に向上しました。また、ディクテーション機能を使うことで、細かい音の違いにも敏感になり、英語の理解が深まりました。英語の音をしっかり学び、リスニング力を上げたい方には本当におすすめです!
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